2006年10月

木下健&タツローの「新聞で簡単にできるラップ理論」必勝法①

5ハロン通過タイムが大穴馬をつくる「好走ラップタイプ別馬リスト」特別掲載!

 指数ファンの間では「これが解明できれば、究極の予想が可能になる」とさえいわれている「ラップ」。

 実際には、あまりに膨大&複雑すぎて手におえないのが現実だ。

 だがこの不可能に挑戦し、ほんの少しだが予想に使って驚くべき成果を上げている男がいた。

 「2億4000万の男」タツローである。今回、木下の友人であるこの男の協力を得て、「ラップ理論」をなんと新聞と本誌だけで実践できるようにアレンジした!

お休みのワケは・・・・?

 お久しぶりです(^^)/。先月は、連載以来始めてお休みをいただきました。

「今月はどこを探しても載ってないみたいなんですが、連載中止になったんですか?木下さんが載ってないならもう最強買いません」

 なんてメールを多くの方から頂きまして、ホントありがたい限りでした(TT)。実は担当さんから、「まあいつも締め切りで暑苦しいのもなんなんで、たまには夏休み取りましょう!」

 という申し出を受けただけなんですが(担当さんが休みたかっただけという噂もある)、休載の告知の文章を入れるの、忘れはったみたいで・・・・(^^;。

 まあ私としては、これがけっこういいリフレッシュになりましたんで、今回からまたさらにパワーアップしてまいりたいと思ってます。

 で早速ですが、これからも本誌の連載をさせていただく上で絶対に守っていきたいと思っているコンセプトがあります。それは【お父さんにもやさしい、競馬新聞で実践できるアナログ馬券術】

 自分がパソコンを使って指数を中心にしたデジタル競馬を実践してるのにこんなことをいうのはけったいな話ですけど、「やはり競馬の基本は“アナログ”だから自分の持つデジタルのエエ部分を、なんとかアナログに変換して皆さんに提供できたらな」と思って、これまでずっと書いてきました。今後もその考えを変えず取り組んでいきたいと思いますんで、応援のほどよろしくお願いいたします。

「ラップ」なら究極の予想ができる?

 さて今回ですが、まずは前フリ。これまでも何回か取り上げてるんですけど、「タツローさんのラップ理論」って覚えてはりますか?過去に私が編集部に紹介して、2003年3月号で「2億4000万の男のラップ理論」で初登場し、半年ほど続いた人気の理論です。まずは、その理論がどんなもんかを説明します。

 今ではすっかり、馬券術のひとつのジャンルとして「指数もの」が定着した、といっても過言ではないと思います。もちろん私もこういう「指数もの大好きファン」のひとりですが、そういう「指数もの大好きファン」の間では、実は次のような夢、というか幻想、というか野望みたいなもんがあったりします。《レースに出た総ての馬のラップを分析できれば、とんでもない精度での予想が可能になるのでは?》

 そもそも『スピード指数(タイム系理論)』の登場自体が革命的でした。「走破タイム」を科学的な手法で数値化し、まったく違う条件を走ってた馬同士の能力の比較を可能にする・・・。「走破タイム」だけを扱ってこれほど予想の精度が上がるなら、「ラップタイム」(ペースを含む)も同じように科学的に分析できれば、さらに予想の精度は上がるのでは、ちゅーことですわ。

 確かに、もし本当に「ラップ」を徹底的に分析できれば、予想の精度はモノ凄いことになると思います。極端な話、予想で一番難しいといわれるレースの展開やペースまでも事前にわかりそうですから、上位に来る馬来ない馬がかなりの度合いで読めてしまうかもしれません。

 でもそんなん、実際にはほとんど不可能でんがな(^^;。そもそもこれをやるには、まず個々の馬のラップタイムが必要ですが、そんなデータどこにあります・・・・?レース映像見ながら、1頭1頭ストップウォッチで計りますか?データが集められたとしても、分析するのがまた膨大&複雑きわまりない大仕事。どんなに性能のいいパソコンでもおっつきませんわ。とまあ理論上は可能でも、事実上は不可能なのが「ラップ馬券術」なわけです。

 でもこの不可能に挑戦して、ほんのサワリ程度ですけど実際の予想に使ったのが、タツローさんですねん。彼のラップ理論のキモを強引に要約すると、《各馬には各馬の、己が能力を発揮できるペース(=ラップ)がある。自分に合ったペースなら好走するし、合わないと凡走する》

 タツローさんは、ここでは詳細は省きますが、馬場差や基準タイムなどを膨大な時間と複雑な手間をかけて抽出した上で、個々の馬の得意なラップ(流れ)を導き出します(参考までに、「ラップ理論開眼のキッカケ」をタツローさん自身に書いてもらいました。P110)。もちろんすべてのレースはムリなんで主にダート中心ですが、実際に馬券を買うときは、逃げ先行の顔ぶれでそのレースの流れを予想して、その流れに合う馬を買うという方法で、とても大きな成果を上げておられます。

 タツローさんは、もともとは私の指数会員さんだったのですが、オフ会でお会いしたときにその考え方に共鳴して以来のお付き合い(詳細は03年3月号~9月号に)。今では私のオリジナル指数入り出馬表に、彼の理論を反映したファクターを入れるほど仲良しで(^^)、今回のテーマや先月号の
「小倉1200ドカンラップ理論」も、タツローさんの理論や分析をベースに私がアレンジした感じですねん。付け加えておくと「ラップ理論」の凄いところは、条件戦などでやるたびに着順がかわるような「ドングリの背比べ」のメンバーでこそ威力を発揮するところです。つまり、力が抜けた馬がいない場合は、ペースが合うか合わないかで、上位に来るメンバーがクルクル変わるからです。だから、「ペースを握る馬」が作るペース次第で前走2ケタ着順の馬が積極的の買えたり、ペースが合いそうになければ人気馬でも自信を持って切れたりします。

インスタントな「ラップ予想法」

 そして今回のメインテーマですが、題して「簡単お手軽ラップ風3分クッキング馬券術」なるものを、お届けしようと思います。

 実はこれは、私が日ごろから実際に使っている「インスタントラップ馬券術」。でもラップラップしたもんじゃなくて、気軽に“出目感覚”で使ってもらえると思います。

 タツローさんの本来の精密な「ラップ理論」に比べると、インスタントなんで多少は精度が下がりますけど、「ラップ理論」はもともとがとんでもなく精度が高いもんなんで、「下がる」いうてもタカがしれてなんがな(^^;。 ムダな買い目を絞るためにはひじょうに有効やと思いますので、ぜひ試してみてください。それに、一応は科学的な「ラップ」に基づいたものなので、出目よりも全然オカルトチックではないのでご安心を。

 さらに前途の通り、この連載のコンセプトは【お父さんにやさしい、競馬新聞で実践できるアナログ馬券術】。だから実践するときは、パソコンや電卓などは不要で、必要なのはこの「競馬最強の法則10月号」と「競馬新聞」だけ!でないと【お父さんにもやさしい】とはいえませんもんね(^^)。

馬それぞれに合う流れがある

 では、『簡単お手軽ラップ風3分クッキング馬券術』の具体的な実践方法です。まず今回のバージョンは「芝の1800以上の距離」で使用します。私は普段は自分で設定した「にこちゃん指数」を使って予想しますけど、それ以上に買い目を絞りたいときに、この『簡単お手軽ラップ風3分クッキング馬券術』を実践しています。

 基本的な考え方は、タツローさんのラップ理論の「各馬には各馬の、己が能力を発揮できるペースがある」というのと変わりません。「遅いペースで好走する馬」やら「速いペースで好走する馬」などなど、馬をタイプ別に分類した上で、今回のペースを想定して狙いの馬を絞り込むというもんです。

 まずは画像AとBをご覧ください。これは7月30日小倉11R都井岬特別に出走していた1番人気のスマイルフォライフと3番人気のローテクロイツの成績です。そこへ、この2頭の過去のレースの通過ラップを掲載してみました。

 単純に各成績とその時の5F通過のラップだけを見てみると、スマイルフォライフは5F60秒台より速いペースでレースが流れた場合に好走し、逆に61秒を超えるスローペースだと凡走しやすいことがハッキリと判ってもらえると思います。

 ローテクロイツはその逆で、速いペースでは凡走し、緩いペースで好走するのがわかりますよね。ラップ理論の「各馬には各馬の、己の能力を発揮できるペースがある」とは、まさにこのことですねん。今回は、5Fが60秒を切る59.9秒と比較的速いペースの流れになったので、「速いペースで好走タイプ」のスマイルが勝ち、「速いペースでは凡走する」ローテはやはり4着に敗れました。

 馬券的にいうと、今回の流れを作りそうな逃げ先行馬(このレースの場合はトーチタス)がどういうラップを刻む馬か知っていれば、それに合う馬(スマイルフォライフ)は積極的に買い、合わなそうな馬(ローテクロイツ)は評価を下げる、という感じです。逆に今回、もしペースを握った馬が62秒を超えるスローペースでレースを引っ張りそうなら、この2頭の着順は逆転しそうなので、買い目も変わります。

5つの分類で新聞でも予想可能!

 今回の『簡単お手軽ラップ風3分クッキング馬券術』のキモは、実はこの「5F通過タイム」。各馬が好走凡走している「5F通過タイム」を調べて予想に活かしてもらおうと思ってたんですが、JRAから普通に提供されている情報なのに、悲しいかな競馬新聞には5Fタイムってけいさいされてないんですよね・・・・(編集注/サンスポと競馬エイトには一部載っています)。そこで考えましてん!私が調べて提供しようと(^0^)/。

 でも「どの馬がどのレースを何秒で好走凡走した」なんて情報量が多すぎて使いようもないんで、各馬が好むペースを判断し、タイプ別に分類した馬のリストを掲載しました。分け方は、次の5種類です。

 【FA】タイプ・・・スマイルフォライフのような、60秒を切る速いペースを好むタイプには速い(Fast)の頭文字をとって【FA】タイプと分類。

 【LO】タイプ・・・ローテクロイツのように62秒以上の緩いペースで好走するタイプの馬は、緩い(Loosely)の頭文字をとって【LO】タイプと分類。

 【M1】タイプ【M2】タイプ・・・中間の60.0秒~61.8秒までラップで好走するタイプの馬を(Middle)の頭文字をとって【M】タイプと分類しますが、この【M】タイプは幅が広いので、60秒台で好走傾向が見られる馬を【M1】とし、61秒台で好走傾向が見られるうまを【M2】とします。

 【EX】タイプ・・・以上のように明確にタイプが判断できる場合に限り4つのタイプに分け、好凡走傾向がハッキリしない馬には例外(Exception)として【EX】タイプと表記。

 今回の掲載分は、6月30日以降に1800m以上の芝レースに出走した、1000万クラス以上の馬です。従って予想に使うなら、芝の1800以上のレースに限ります。1000万以上にしたのは、未勝利・500万の馬まで掲載するスペースがないのと、一般の競馬ファンの方のためにはなるべく後半のレースで使える方がいいだろうと考えたためです。

 またこのタイプ分けは、あくまでこの時点での評価ですので、“ずっとこのままのタイプ”と思わないでください。今後、別のペースを優秀な内容で走ったと判断できた馬は、タイプの変更もあります。

 実際に使うにはまず、P110~111「好走ラップタイプ別馬リスト」で出走馬のタイプを知る必要がある。この時点ではタイプ分けは、赤ペンで書き込んである通り。なお「/」は、この時点では資料が乏しくてタイプが判明していない馬。こういう馬は、しょうがないので臨機応変に対応。

 タイプを調べたら、今度は「ペースを握りそうな馬」の目星をつける。ここならやはり実績から⑪マイネサマンサになりそうで、この馬のタイプは「FA」。つまりこのレースは「FAの流れになる可能性が高いから、上位に来る馬もFAタイプ」という予想が成り立つ。ここでのすべてのFAタイプをボックスで買うと、3連複なら20点、3連単で60点。

 実際のレースはタイプ不明の②が逃げたが、⑪も早めに先頭に立つ積極的なレース運びでやはり「FA」の速い流れに。1~3着はFAタイプで決まり、⑨③④で3連複5980円、3連単は2万9140円。7番人気の③レクレドールが積極的に買えて、逆に人気の⑫ブルーメンブラッドや①チアフルスマイルはタイプが違うので評価を下げられるの「ラップ理論」の長所といえる。 

 ここでもやはり、全馬のタイプを調べた上で「ペースを握りそうな馬」の目星をつけると、①トーワクリスタル=FA、⑧エキゾーストノート=LOの2頭。こういう場合は、当然だが速い流れを作るタイプが優先されるので、「①がFAタイプの流れを作る」と予測できる。①以外のFAタイプは③④⑩⑫の4頭。レースはやはり①が逃げて、1~3着は③⑫⑩で決着。3連複3万1730円、3連単は15万5720円。2,3着はそれぞれ6,10番人気だったが、タイプがわかれば無条件でこういう人気薄を拾えるのが、「ラップ理論」の優秀さだ。

「今回ペースを握る馬」

 では最後に、使い方を紹介します。基本の使用法は、

①馬券を買うレースで「今回ペースを握ると思われる馬」のアタリをつけて、下記の表でそのタイプを調べます。
②「ペースを握る馬」のタイプがわかったら、そのレースで同じタイプの馬を選んで、買い目を決める。

 例えば、今回は逃げ馬が1頭だとして、その馬が【FA】タイプやった場合、他の【FA】タイプの馬だけで構成される馬券を購入する、ということです。同じように、「ペースを握る馬」が【LO】タイプやったら【LO】タイプの馬だけで構成される馬券を購入します。

 ちょっと微妙なのは【M1】【M2】タイプで「ペースを握る馬」が【M1】タイプだった場合は、他の【M1】タイプももちろん、【M2】タイプも絡めた馬券を購入するとエエと思います。

 また【EX】タイプは、好凡走のペースを分類しきれない馬たちなので、ペースを握る馬のタイプを問わず、ケースバイケースで対応してください。

 あと「ペースを握る馬」が複数いる場合は、これはまあ普通に「どれがペースを握るか」予想せなあきません。でも常識的に考えれば、その複数の中に【FA】タイプの逃げ馬がいるときに、平均ペース以下の流れになるとは考えにくいですよね?それに「買い目を減らす」のがこの馬券術の一つの目的でもあるので、どれかのタイプに焦点を合わすほうがいいかと思います。そのほうが、仮にハズレても、資金が少ないので被害を軽減できますしね。

 参考まで担当さんが実践例1,2も用意しましたんで、こちらも参考にしてみて下さい。ただ勘違いせんでほしいのは、あくまで競馬ですし、「必ずしも毎回、同じタイプの馬だけで決まる」ってもんでもないところです。実際にはこんなにはっきりタイプ分けできるもんでもないし、タイプの“グレーゾーン”になる馬もいます。だから先に書いたように“出目感覚”で、気楽に使ってもらえればと思います。

 といっても闇雲に買うわけでなく、少ない点数でも当たるときはキッチリ当たるわけですから、出目以上の見返りがある出目感覚といえるはずです。

 これが好評なら、できればシリーズ化したいと考えてます。だから次回はぜひとも的中報告をお伝えしたい意気込みなので、期待して下さいね~(^^)。

ラップマスター・タツロー氏直筆「ラップ理論」開眼のキッカケ

 レースを見ていると、逃げ馬が先行馬の思わぬ競りかけにあい、大逃げになって縦長の展開になり、いわゆる速い流れでレースが進み、セーフティーリードが功を奏して直線ではバテながらも必死で粘ろうとして、あとわずかというところで差されてしまったというシーンを見たことがあると思います。パソコンでその馬の逃げたラップを見ると、速い流れだったと判断できるきびしいラップでした。

だからこういうタイプの逃げ馬は、「あの先行馬の競りかけなくても、もっとラップを落として行けば、逃げ切れた」と思うので、そういう馬を見かけては、「次は遅いラップで逃がせてもらえれば期待できる」と考え、自分のパソコンに記録していたものでした。

 あるとき、そのようにチェックしていた逃げ馬の1頭が出てきました。出馬表をよく見ると、先行馬も少なく、単騎逃げが見込めるメンバー構成でした。だから「ここはスローで逃がせてもらえる」と考えて、その逃げ馬からたっぷりと馬券を買って、期待一杯でレースを待っていました。

 レースは予想通りの単騎逃げで、ペースが遅いのは明らかでした。なのに前走とは違って、直線に入る手前で馬群に飲まれる始末・・・。レース後に早速そのレースのラップを見ると、やはり感じた通りの、遅いラップでした。

 「これはどういう事なのか?」と調べていくうちに、やがてこの馬が逃げ切ったレースの共通点が「速いラップで逃げた時」だというのに気付きました。

 さらに調べていくと、その逃げ馬が速い流れを逃げ切った時に、「決まって一緒に連絡みしている馬」がいることにも気付きました。どうやら馬というのは、「自分に合ったペースでないと力を発揮できないのでは?」と思いはじめました。たとえば逃げ馬だと、なんでもスローに持ち込めたら有利と判断しがちですが、決してそうではなく、ガリガリやってペースを上げ、上がりのかかるレースの方が持ち味が活きる逃げ馬もいて、こんな逃げ馬が単騎で逃げても、必ずゴール前で沈むのでは、ということです。

 また差し馬だと、速い流れになったら有利と判断しがちですが、決してそうではなく、ゆったり追走できることで持ち前の末脚を発揮できるという差し馬もいて、こんな差し馬が速い流れのレースでは追走で一杯になり、直線ではまったく伸びない、だとか。

 これらのことから、一般的によく耳にする「逃げ=スローペースが有利」、「差し=ハイペースが有利」という従来の単純な考え方は、すべての馬にはあてはまらないと思い始めました。

 要するに、「各馬には各馬の、己が力を発揮できるペースが存在する」ということです。もしそうなら、「各馬の好走ラップ」を知って事前にペース別に「タイプ分け」しておくことで、好走が見込めるペースの時に狙ってやれば、回収率にもつながり、効率のよい馬券が買えると思ったのです。