最強の法則2003年10月号

話はズレますけど、デムーロ騎手が始めて日本にきた時、「コイツはイタリアのアンカツや!」っておもいましたわ~ (^_^)。

アンカツと武豊は「和と洋」の微妙な違い?

 前回、前々回と2度にわたって、「1コーナーの進入時に起こるロスの可能性」を採り上げてみました。

 その流れで今回は、予想ファクターとしての活用の仕方等に触れようと思ってました。が、この号は、大々的にアンカツ特集をやるそうで、ここでも安藤勝己騎手について書いてくれということです。何でも、6月号の武豊騎手についての特集のときに書いた原稿がなかなか好評やったそうで、今回も企画に参加するように賜りました(^^;。

 というわけで、本題の「1コーナー・・・・」の方は一時中断して、来月以降に持ち越しとさせていただきますが、ご了承下さい。

 さてアンカツ。武豊特集のときにも書きましたが、私は武豊フリークです(^^)。けど、実は安藤勝己フリークでもあるんです(^^)。といいながらも実はデムーロフリークでもあり、岩田騎手や小牧太騎手といったところのフリークでもあります(^^;。まぁ、裏を明かせば、上手い騎手が好きなだけなんやけどね(^^;アハハ。 日本人限定で上手い騎手を大別した場合、武豊騎手と安藤勝己騎手は、まさに横綱の二枚看板って感じで思ってます。そやけどその騎乗スタイルはぜんぜん違うモンやと感じてます。

 どう表現したらエエんかわからんけど、正反対というわけではなくて、微妙に比較しにくい違いやないでしょうか?そうですねぇ・・・、強いて例にとるなら日本料理とフランス料理の美味さの違いとゆうか、同じ料理やねんけど、同じ土俵で評価できんとゆうか・・・。

 例えば、武豊騎手は持って生まれた才能と直感で騎乗するタイプと思います。このタイプに関しては武豊騎手以外にいてないんちゃうかなって思ってますんで、彼固有のモンと言っても言い過ぎじゃないと思います。一方の安藤勝己騎手はセンス+腕力で騎乗するタイプで、腕力に関しては地方騎手に多いタイプでしょうね。また外国人騎手でもデムーロ騎手はこれに近いタイプと感じています。

 もうひとつ、上手い騎手のタイプとして分類するなら、精密機械のような完璧に近い騎乗技術を売りとする、ペリエ騎手や、デザーモ騎手のようなタイプがあるでしょうね。

 今回、安藤勝己騎手についての企画を戴いた時には、正直なところ「えらいこっちゃなぁ~」って思いましてん(^^;アセアセ。 というも、武豊騎手の場合と違って、アンカツさんに関しては、ハッキリとした傾向が掴めてませんねん(‥;)  日ごろから結構注目してレースを見てますねんけど、ここでわざわざ読者の方に紹介するような「安藤勝己活用術」なんてもってないんですよね、正直いいますと・・・(^^;。

 武豊騎手のように時として派手な戦法を見せて目立つわけでもないし、逆に目立った失敗というか、弱点というか、盲点のようなモンを暴露するような騎乗もほとんどないし・・・。それでいて確実に馬が動くんです。間違いなく上手いんです。『安藤勝己』・・・。この人って、いったい何なんでしょうかね(^^;。

 先にも書きましたが、「安藤勝己活用術」なんて持ってないし、過去のデーターとか引っ張り出して、わざわざ傾向なんか見つけて書いても説得力なんてないと思うんで、今回は私の走馬眼的見地から感じてる、安藤勝己騎手の印象を書かせてもらうってことで、話を進めていきたいと思います。その中で、私としても、『騎手・安藤勝己』の存在を再認識したいと思います。

「直線以外も重要」はアンカツに教わりました~ (^^;。

 中央で頻繁に騎乗するようになったのは98年ごろやったでしょうか。私はその頃初めて『安藤勝己』という騎手の存在を知りました。それまで地方競馬にまったくの無縁やった私は、中央の騎手とは一味違った彼の追い方に、非常に興味深いものを感じて、すぐに安藤勝己騎手の魅力に惹かれました(^^)。 一般に、中央の騎手が騎乗する場合、頭を低くし、ヒザを狭めてお尻を持ち上げ、背中をほぼ水平にし、馬の首のすぐ後ろに騎手の頭がくる感じの、いわるゆ「モンキースタイル」の形で乗るのが普通です。このスタイルでは、追い出してからも体勢はほとんど変わらず、なるべく馬に負担がかからないように、体の揺れやブレなどはヒザを使って衝撃を和らげ、体重移動と腕で手綱を推しているように映ります。まぁ、いまさら私が説明することもないですけどね(^^;。

 一方、安藤勝己騎手の場合、モンキースタイルは同じですが、よくよく見ると中央の騎手よりも若干ヒザの間隔が広いように感じます。中央の騎手との一番の違いは、この馬を追っているときのスタイルでしょうね。その姿がすごく目立つんで、フルゲートのレースであっても、勝負服やゼッケンを確認するまでもなく、ひと目で彼を見つけることが出来ます(^^) 彼の場合、馬を追い出すと中央の騎手よりも、少しだけお尻の位置が低くなるように思います。お尻が低くなって、体が立ち加減になり、そしてヒザで馬を押すという感じです。そのために中央の騎手よりもこぶし一つ分ほどヒザが開いているように見えるんでしょうかね。そして腕は、「馬を推す」というよりも、「馬を引っ張ってる」と表現するほうがシックリくるように思います。中央の騎手の場合、体の揺れを極力少なくして馬に対する負担を軽減しようとしてるのがまじまじと伝わってきますが、安藤勝己騎手の追い方で確実に馬が動く場面を見せられると、そんなことはもしかすると無意味なのかもしれん・・・って気さえしてきます(‥;)。それまでに地方騎手の騎乗している場面を見ることは少なかったんで、新鮮な感じがしましたが、頻繁に地方騎手が中央にくるようになったことで、「アンカツの追い方って地方騎手独特の追い方なんや」ってことを知りました。最近では、熊沢騎手なんかが地方騎手っぽい追い方をするようになった気がしてますが・・・これは余談ですね。そもそも地方馬には、牛と間違うような鈍い馬もいると聞きます・・・(・・;)。そんな馬を強引にでも動かそうとすると、自然とああいう乗り方が必要になってくるんちゃうかなって思います。

 後に、吉田稔騎手や小牧太騎手など素晴らしい地方騎手が参戦するようになりましたが、他の地方騎手の中でも、やはり彼だけはグンを抜いた存在で、例えるなら中央での武豊的存在でしたね。「なんでアンカツが乗ったら動くんやろか?」って感じで、彼の乗る馬が走る理由はよく分かりません(^^;。

 まぁ、それ以来『安藤勝己』という騎手を常に意識して競馬を見るようになりました。そして注意して彼を見るようになると、素晴らしいのは追い方だけじゃないことにすぐに気づきました。

 直線で馬を追うという行為は、それまでの道中の工程の集大成やと思ってます。私は常日頃から、「直線に入るまでに競馬は7~8割方決まってしもてる」っていう考えです。単行本の中でも『スタートから1コーナーまでの大切さ』と『3・4コーナーの勝負ところの大切さ』を重点に書いてきました。このようなことを思うようになったのは、実は安藤勝己騎手の騎乗を見て、自分の中の最重要項目となったのでした。彼が中央に参戦するようになった頃の騎乗を見ていると、「常に前々で競馬をする」、「ラチ沿いの最短コースを走る」、そして「直線で爆発させる」というのがやたらと目に付きました。これは、デムーロ騎手が初めて短期免許を取得して日本で騎乗したときもこれとまったく同じ乗り方でした。「コイツはイタリアのアンカツや!」って思いましたもん(^-^)。

 内ラチ沿いで我慢して、我慢して、直線に入ってから半ば強引に前をこじ開けて一気に爆発させる、という騎乗スタイルです。デムーロ騎手は、皐月賞もダービーも、まさにこの乗り方で制しましたもんね。ほんまに彼らしさが見えた、素晴らしい騎乗やったと思います(^^)。 ちょっと脱線しますと、私の中では、デムーロ騎手と安藤勝己騎手はごっついリンクしてます。これは本人さん達にとっては、むちゃむちゃ失礼なことかも知れませんけど、デムーロ騎手がダービーを取ったことは、私の中ではアンカツがダービーを取ったようなモンなんですわ(^^;アセアセ。 実はこれまでにもこの連載で、安藤勝己騎手とデムーロ騎手の素晴らしさについては何度か書きました。記憶に長けた方なら覚えてくれてるかと思います(^^)。

芝とダートで乗り分けてますかね?

 これまでに書いた安藤勝己騎手の持ち味は、ダートでこそ発揮されると思ってましたが、中央に移籍した今年、彼は圧倒的に芝の勝ち鞍のほうが多くなってます。(8/15終了時点・全51勝・芝33/ダ18)。 昨年までは芝もダートも均等に勝ち鞍をあげてたんで、これはほんまに意外な結果でしたし、その原因は分かりかねますけど、最近の彼の騎乗を見ていると、芝とダートでは、違う乗り方をしてるからちゃうかな・・・って、なんとなくですけど思いました。

 ダートの場合は、相変わらず、前々での競馬が多いですが、芝の場合はあんまり前々にこだわってないように思います。そしてダートの場合は内目を通って最短距離を進ませる場面が多いですが、芝の場合は勝負どころから直線にかけて、内目よりも外目を回して、切れ味勝負のレースを仕掛けてくることの方が多いように感じました。そういう意味では、『安藤勝己』という人は、43歳にしてまだまだ進化しているのかもしれません。ただひとつ、ちょっと気になったのは、その芝のレースの影響というか、レースイメージが焼きついてるんかどうか知りませんけど、ダート戦で内の最短距離を通さず、外を回る競馬をさせるシーンが目に付くように思いました。 邪推ですが、中央に移籍したことで、環境的にも心境的にも色々変わったというか、変わらざるを得ないというか、気を使う部分も増えて、今までと同じようにいかないのかもしれません。少々のロスがあっても、外を回して勝負になる芝の成績がいいのではなく、ロスを最小限にして前々で競馬をしないと勝負にならないダートで結果が出せてない、と考えるほうが自然じゃないでしょうか・・・。

 8月15日終了時点での安藤勝己騎手の成績は51勝。武豊騎手の成績は118勝。コレほどまでに水を開けられる騎手やないと思うんですけどねぇ・・・。

 今回は、主観的な印象ばかりですみませんが、アンカツさんは私の中ではこんな感じですねん・・・(・・;)。まあ中央所属になったばかりで、まだこれからという感じもあるので、この先をじっくり見さしてもらおかと思ってます。